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2025.08.07

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【コールセンターDXガイド|流通・小売業界編】DXを加速するボイスボット活用戦略

AIコンシェルジュ

コールセンターDXガイド

あなたの業界の「声」の課題、AIが解決します

あらゆる業界の「声」の課題に、AIが応える。
新連載【コールセンターDXシリーズ】が始まります。

第5弾は、企業も顧客もデジタル化がますます活発化している「流通・小売業界」。鳴り止まない電話、セールや季節イベント時に急増する問い合わせ、慢性的な人手不足。これらの喫緊の課題を前に、サービスレベルや顧客満足度を維持しつつ、どうやって効率化を実現するのか、ボイスボットがもたらす変革の最前線に迫ります。

今後も様々な業界を特集する予定です。
貴社の課題解決のヒントが、きっと見つかります。

流通・小売業界の弊社事例:
生活協同組合コープこうべ|国内最大級の生協が抱える課題とAI化の成果
日本生活協同組合連合会|注文商品のキャンセル受付を自動化~24時間365日の受付を可能にし、利用者の利便性向上へ~
ニッセン|年間10万件近くの返品対応をAI受付
プレミアムウォーター|ボイスボット架電によるリマインドと再配達日時の希望受付

なぜ流通・小売業界の電話業務は改善されないのか?

EC化、オムニチャネル戦略の進展により、現代の流通・小売業界における顧客接点はかつてないほど多様化・複雑化しています。顧客はオンラインとオフラインを自由に行き来し、時間や場所を問わず、シームレスな購買体験を期待するようになりました。この変化は、ビジネスチャンスを拡大させる一方で、企業の顧客対応、特に電話を起点とするコミュニケーションチャネルに深刻な負荷をかけています。

恒常的な人手不足と採用・育成コストの増大

コールセンターは慢性的な人手不足に悩まされており、特に流通・小売業界では、季節変動やキャンペーンによる入電量の急増に対応できる人材確保が恒常的な課題です。採用市場での競争激化に加え、専門知識やコミュニケーションスキルを習得させるための継続的な研修が必要となり、そのコストは年々増大しています。しかし、サービス品質の低下や既存オペレーターへの負担増大を防ぎ、機会損失に繋がるリスクを少しでも減らすためには、継続した採用・育成が必要となっています。

定型業務のループと現場の疲弊

流通・小売業界のコールセンターには、「在庫はありますか?」「営業時間は?」といった、単純ながらも大量の定型業務が絶え間なく寄せられます。これらの問い合わせがもたらす問題は、オペレーターを疲弊させるだけではありません。オペレーターの貴重な時間を大量に消費し、企業の売上やブランドイメージに直結する、本当に重要な問い合わせに対応するためのリソースを奪ってしまうことです。

本来、最も時間をかけて丁寧に対応すべきは、「購入を真剣に検討している顧客からの詳細な相談」や「放置すれば大きなクレームに発展しかねない複雑なトラブル」といった、高度な判断を要する案件です。しかし、絶え間なく続く定型業務に追われることで、これらの重要案件への対応が後回しになったり、十分なヒアリング時間を確保できずに画一的な対応で終わってしまったりするケースが後を絶ちません。その結果、大きな販売機会を逃し、あるいは小さな不満を致命的なブランドイメージの低下に繋がるクレームへと発展させてしまうリスクを、組織として抱え込むことになります。

24時間365日対応への期待と高コストの壁

ECサイトでのショッピングが当たり前になった今、顧客は深夜や早朝、休日といった営業時間外でも、問い合わせや注文、手続きを行いたいと考えています。この「24時間365日対応」への期待に応えることは、顧客体験(CX)を向上させる上で非常に重要です。しかし、これを有人で実現しようとすれば、深夜勤務のシフト管理や割増賃金など、膨大な運用コストと管理工数がかかります。多くの企業にとって、このコストの壁は高く、結果として顧客の利便性を損なっているのが現状です。これは、ビジネス機会の損失と顧客満足度の低下を同時に引き起こすジレンマと言えます。

非効率なアウトバウンド業務とオペレーターの心理的負担

流通・小売業界では、インバウンド(受信)だけでなく、アウトバウンド(発信)業務も重要です。特に「再配達日時の調整」や「サービスの利用料金督促」といった業務は、企業の収益や物流効率に直結します。しかし、これらのアウトバウンドコールは、相手が不在であったり、電話に出てもらえなかったりと接続率が低く、非常に非効率です。また、特に督促業務は、顧客との間に緊張関係を生む可能性があり、オペレーターにとって大きな心理的負担となります。この非効率性と心理的負担は、業務全体の生産性を低下させる大きな要因です。

AIボイスボット|業務効率化と顧客体験向上を両立する新常識

オペレーターがヘッドセットで丁寧な顧客応対をしているのと対照的に、ロボットが定型的な注文受付や管理をしているイラスト

これまで述べてきた「需要変動への対応」「定型業務のループ」「24時間対応ニーズ」といった構造的な課題。これらの根源には、実は一つの共通した問題が横たわっています。それは、本来人間が対応すべき『高度な判断を要する業務』と、システムで代替可能な『定型業務』が、コールセンター内で混在し、分断されていないことです。

この業務の混在が、オペレーターという貴重な人的資本を単純作業に浪費させ、顧客は待ち、オペレーターは疲弊するという負のスパイラルを生み出してきました。この悪循環を断ち切るための本質的な解決策は、単なるツールの導入ではなく、業務そのものを再定義し、「仕事の仕分け」を断行することにあります

AIボイスボットは、この「業務仕分け」を可能にするための最も強力なソリューションです。繰り返し発生する定型業務をAIに完全に移管することで、人間を本来あるべき姿、すなわち『人でなければできない価値創造』へと解放します。これは、守りのコスト削減に留まらず、企業の競争力を高めるための攻めのDX戦略なのです。

AI(ボイスボット)が担うべき領域

正確性、スピード、継続性が求められる定型的な業務は、AI(ボイスボット)が担うべき中心領域です。

業務内容:
■注文、返品、交換の受付
■在庫、納期、配送状況の確認
■店舗情報、営業時間、FAQへの回答
■再配達日時の調整や料金督促などの定型的なアウトバウンドコール

役割:
■24時間365日の顧客接点を確保し、機会損失を防止する
■問い合わせの繁閑差を吸収し、安定した応答体制を維持する
■全ての対話内容をデータとして蓄積し、サービス改善のインプットを提供する

人が担うべき領域

共感、創造性、複雑な問題解決能力が求められる非定型的な業務こそ、人間がその価値を最大限に発揮すべき領域です。

業務内容:
■複雑なクレーム、深刻なトラブルへの対応
■顧客一人ひとりの状況に合わせた購買相談やコンサルティング
■長期的な優良顧客との関係構築(リレーションシップ・マネジメント)
■AIでは対応しきれないイレギュラーな問い合わせへのエスカレーション対応

役割:
■高い共感力で顧客の不安や不満を解消し、信頼を回復する
■専門知識と提案力で顧客の期待を超える体験を提供し、顧客ロイヤルティを高める
■顧客の生の声を分析し、商品やサービスの根本的な改善に繋げる

そもそもボイスボットとは? IVRとの違い 

ボイスボットとは、AI(人工知能)を活用し、人間の声で自動的に電話応対を行うシステムのことです。

従来のIVR(自動音声応答システム)が「○○の方は1番を、△△の方は2番を…」というプッシュボタン操作に限定されていたのに対し、ボイスボットはお客様が話した言葉を直接認識し、自然な対話形式で応答できる点が最大の違いです。これにより、より複雑で柔軟な対応が可能になります。

ボイスボットについてもっと知る

具体的にどんな業務で活用できるのかを次の章で説明します。

流通・小売業界でのボイスボットの具体的な活用イメージ

ボイスボットは、具体的にどのような業務で活用できるのでしょうか。ここでは、流通・小売業界で高い効果が期待できる3つの活用シーンを、課題背景から解決策、そして具体的な会話の流れまでを一体化した形でご紹介します。

活用例1:24時間化を実現する「注文の自動化」

ECサイトでのショッピングが当たり前になった今、顧客のライフスタイルは大きく変化しました。深夜や早朝、祝休日といった従来の営業時間外にも、商品を購入したいという顧客ニーズが高まり、電話での注文チャネルにも新たなビジネスチャンスをもたらしました。しかし、この新たな需要に有人体制で応えることは、深夜勤務による人件費の高騰と、品質管理の観点から大きな負担となります。結果として、多くの企業はこの「コストと人材の壁」に阻まれ、貴重な販売機会を逃しているのが現状です。ボイスボットは、この「24時間化する顧客ニーズ」に応えるための最適なソリューションとなります。

カタログ注文の電話自動受付| ボイスボット: 「お電話ありがとうございます。こちらはTACTショッピングです。AIがご注文を承っております。会員様確認のため、ご登録のご登録のお電話番号をお話しください。」 顧客:「090-1234-5678」 ボイスボット:「田中花子様でよろしいでしょうか?」 顧客:「はい」 ボイスボット:「いつもご利用いただきありがとうございます。ご注文を希望される商品番号と希望個数をお話しください」 顧客: 「54321番を1点、お願いします。」 ボイスボット: 「『快調グルコサミン 3ヶ月セット』を1点ですね。ほかにご必要な商品はございますか?」 顧客:「以上で大丈夫です」 ボイスボット: 「かしこまりました。それではご注文の商品をご登録のご住所へお送りいたします。お電話ありがとうございました。」

この対話の裏側で、ボイスボットはCRMや在庫データベースと連携し、注文情報をミスなく自動で登録することが可能です。顧客は自身のライフスタイルに合わせて、いつでも好きな時にストレスなく注文でき、その利便性の高さは顧客満足度に直結します。また、企業はこれまで対応できなかった営業時間外の売上を獲得できるだけでなく、営業時間内の商品の選び方に関する相談や購入後のアフターフォローといった、人間ならではの付加価値の高い業務に集中することができます。これにより、コールセンター全体の生産性が向上し、顧客・従業員の満足度も高めることが可能になります。

活用例2:顧客満足度を高める「返品・キャンセル自動受付」

コールセンターの営業時間外に発生する返品希望は、顧客満足度を大きく左右するポイントです。特にアパレルなどは、商品のサイズや色が顧客のイメージと合わないといったことは日常的に発生します。そんな顧客が「返品したい」と思ったその瞬間に手続きできる環境を整えることで、ブランドの印象に貢献します。この課題に対し、ボイスボットはCRMの購入履歴と連携し、24時間365日、返品受付を自動化します。顧客は、深夜でも休日でも、以下のようなスムーズな対話で手続きを完了できます。

返品対応の自動化| ボイスボット: 「お電話ありがとうございます。TACTファッション、カスタマーサポートです。ご用件をお話ください。」 顧客: 「返品をお願いします」 ボイスボット: 「いつもご利用ありがとうございます。会員様確認のため、ご登録のお電話番号をお話しください。」 顧客:「090-1234-5678」 ボイスボット:「田中花子様でよろしいでしょうか?」 顧客:「はい」 ボイスボット:「返品をご希望の商品番号を教えていただけますか?」 顧客:「43210番です」 ボイスボット: 「『シルキータッチ・ワンピース』のネイビー、Mサイズでございますね。差し支えなければ、返品理由をお聞かせいただけますか?」 顧客: 「思っていたより、サイズが少し小さかったので。」 ボイスボット: 「承知いたしました。それでは、返送用の段ボールをご登録のご住所にお送りしますので、返品希望の商品を封入いただき、ご返送ください。ほかに確認したいことはございますか?」

活用例3:運送コストを最小限する「再配達自動調整」

配達完了率は流通・小売業界において重要な業績評価指標(KPI)です。在庫を抱えてしまうリスクだけでなく、再配達による運送会社への依頼も並々ならぬコストがかかっています。特に、物流業界では「2024年問題」以降、トラックドライバーの時間外労働時間制限や、標準運賃の値上げによって、輸送コストはどんどん高くなっています。その影響は流通・小売業界にも及び、原価設定の見直しやリスクヘッジなどの対策が必要になります。

その対策の一つとして、ボイスボットによるアウトバウンドコールを行い、不在持ち戻りとなった顧客から再配達の希望日時をヒアリングすることで解決します。アウトバウンドコールは相手が電話に出なかったり、話中や多忙で相手に要件を伝えることができずに終話してしまうケースもあり、オペレーターが時間や日付を変えてなんどもアプローチする必要があり、現場を疲弊させてしまいます。そこで、ボイスボットを使い、顧客のリストに効率的にアプローチすることで、反復的な業務を自動化することができます。

再配達の日程ヒアリング| ボイスボット(自動発信): 「こちらは、天然水宅配のTACTウォーターです。本日14時頃、お水をお届けに上がりましたが、ご不在でしたのでご連絡いたしました。このお電話にて、明日以降で再配達のご調整が可能ですが、再配達のご依頼を今なさいますか?」 顧客: 「あ、すみません。おねがいします」 ボイスボット: 「かしこまりました。それではご希望の配達日をお話しください。」 顧客: 「じゃあ、8月8日で」 ボイスボット:「続いて、ご希望の受け取り日時をお話しください」 顧客:「18時で」 ボイスボット: 「かしこまりました。8月8日の18時から20時の間に、改めてお届けに上がります。お受け取りの準備をお願いいたします。」

まとめ:ボイスボットは戦略的投資へ|次世代の顧客コミュニケーションを築くために

本記事で見てきたように、AIボイスボットは、流通・小売業界が抱える「需要変動」「定型業務の多発」「24時間対応ニーズ」「アウトバウンドの非効率性」といった構造的な課題に対する、極めて有効なソリューションです。

ボイスボットの導入は、もはや単なるコスト削減や業務効率化のための一手段ではありません。それは、顧客体験(CX)を革新し、従業員満足度(EX)を高め、データに基づいた経営判断を可能にする、企業の競争力そのものを高めるための戦略的投資です。定型業務をAIに任せ、人は人でしかできない付加価値の高い業務に集中する。この役割分担こそが、これからの時代を勝ち抜くための新しい顧客コミュニケーションの形と言えるでしょう。

自社の電話業務の中に、ボイスボットで自動化できる部分はないか。まずは、最も件数が多く、パターン化されている業務から検討を始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、貴社のビジネスを未来へと大きく前進させるきっかけになるはずです。


サービス紹介:AIコンシェルジュ

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株式会社TACTが提供する、AI コンシェルジュ®は、電話対応業務の自動化・効率化で、さまざまな場面で活用されています。電話時に人の発する言葉を音声認識でテキスト化し、辞書やDBと連携・適切な回答を抽出・音声合成で回答することで、音声対話を可能とするAIソリューションです。

国内トップクラスの音声ボット導入実績と、長年のコールセンター運営で培ったノウハウで、サービス導入後も目標達成に向けチューニングを繰り返し徹底的にサポートいたします。また、様々なシステムとの連携が可能となっており、企業ごとにカスタマイズしたフローや音声認識辞書を構築し、複雑な業務も高い品質で実現しています。

コールフローや対応内容によって初期費用や月額費用が異なりますので、まずはお問い合わせください。

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【コールセンターDXガイド】過去記事一覧:

ガス業界編|ボイスボットで変わる業務効率化と満足度!
保険業界編|ボイスボットによる業務改革とコストカット!
自治体編|AIで実現する住民サービスの向上と自治体DX!
金融業界編|ボイスボットで実現する電話業務の効率化と顧客体験向上への道筋!

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