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2025.06.27
ブログ
AIコンシェルジュ
コールセンターDXガイド
あらゆる業界の「声」の課題に、AIが応える。
新連載【コールセンターDXガイド】が始まります。
記念すべき第1弾は、社会インフラを支える「ガス業界」。繁忙期の電話集中からオペレーターの負担軽減まで、ボイスボットがもたらす変革の最前線に迫ります。
今後も金融、自治体、通販など多様な業界を特集予定です。
貴社の課題解決のヒントが、きっと見つかります。
ガス会社の事例:
■明治産業:オペレータ稼働時間が平均67%減少
ガス会社のコールセンターは、他の業界にはない特有の課題を抱えています。これらは単なる「忙しさ」の問題ではなく、顧客満足度や経営効率に直結する構造的な問題です。具体的にどのような課題があるのか、4つのポイントに分けて見ていきましょう。
2月〜4月の引越しシーズンには、ガスの開栓・閉栓に関する電話が短期間に殺到します。これは予測可能な業務である一方、その量は通常の数倍から数十倍に膨れ上がり、コールセンターの処理能力を完全に超えてしまいます。結果として、お客様を長時間待たせる「あふれ呼」が多発し、「電話が全く繋がらない」という最大のクレーム要因を生み出しています。また企業の対応としても、オペレータをスポットで確保しなければならず、採用・育成コストに大きな負担がかかります。
「料金確認」「支払い方法変更」といった定型的な問い合わせが、コールセンター業務の大半を占めています。オペレータはこれらの反復的な対応に多くの時間を費やすことで疲弊するだけでなく、より重要な業務に集中できなくなるという大きな課題が生じます。例えば、ガス漏れなど一刻を争う緊急連絡への即時対応や、操作が複雑なガス機器に関する丁寧なヒアリングなど、本来オペレータがじっくり時間をかけて対応すべき付加価値の高い業務にリソースを割けなくなってしまうのです。
共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、お客様が電話できる時間は夜間や休日にシフトしています。しかし、多くのガス会社では営業時間が限られており、お客様は「平日の昼間に電話する」という時間的制約を強いられています。しかし、24時間有人対応はコスト面で負担が非常に大きく、顧客の利便性と企業側の運営コストの板挟みになっています。
電話業務は、お客様からの電話を受けるインバウンドだけではありません。ガス設備の法定点検の日程調整や、料金未払いのお客様への督促など、企業側から電話をかけるアウトバウンド業務も大きな負担です。お客様が電話に出ないことも多く、何度もかけ直す必要があり、多大な時間と労力が費やされています。
ここまで見てきた4つの課題。これらは一見すると別々の問題に見えますが、その根底には共通する一つの原因があります。
それは、本来人間が対応すべき「高度な判断を要する業務」と、システムで代替可能な「定型業務」が、コールセンターという一つの窓口に区別なく流れ込み、貴重な人的リソースが後者に忙殺されているという現実です。
この状況を打破する鍵は、ずばり「業務の仕分け」にあります。
つまり、それぞれの業務特性に合わせて、人とAIの役割を最適に分担するのです。
業務内容:
■開栓・閉栓の受付、料金・支払い方法の案内など、手順が決まっている「定型業務」。
■よくあるお問合せの対応
役割:
■24時間365日、正確かつスピーディに大量の問い合わせを処理する。
■一次受付として機能し、人間への橋渡しを行う。
業務内容:
■緊急時の対応、複雑な機器トラブルの相談、お客様一人ひとりの事情に寄り添った対応など、「高度な判断や共感」が求められる業務。
役割:
■AIでは対応できない付加価値の高い業務に集中し、専門性を発揮して顧客満足度を最大化する。
この理想的な役割分担を、音声コミュニケーションという形で実現するテクノロジーこそが、本記事で提案する「ボイスボット」なのです。
では、このボイスボットとは一体どのようなシステムなのでしょうか。従来の自動音声システム(IVR)との違いと合わせて、詳しく見ていきましょう。
ボイスボットとは、AI(人工知能)を活用し、人間の声で自動的に電話応対を行うシステムのことです。
従来のIVR(自動音声応答システム)が「○○の方は1番を、△△の方は2番を…」というプッシュボタン操作に限定されていたのに対し、ボイスボットはお客様が話した言葉を直接認識し、自然な対話形式で応答できる点が最大の違いです。これにより、より複雑で柔軟な対応が可能になります。
ボイスボットについて、もっと詳しく知りたい方はぜひ下記のボタンをクリックください。
それでは、具体的にどんな業務で活用できるのかを次の章で説明します。
ボイスボットは、具体的にどのような業務を自動化できるのでしょうか。ここでは4つの具体的な活用シーンをご紹介します。
繁忙期のコールセンター業務の大部分を占めるのが、この開栓・閉栓手続きです。ボイスボットを導入すれば、この定型業務を24時間365日、完全に自動化できます。
このように、必要な情報をヒアリングし、受付を完了させます。オペレータは、ボイスボットで対応しきれない複雑な案件にのみ集中できるようになります。
「今月のガス料金はいくら?」「開栓申込の申請状況を確認したい」といった定型的な問い合わせも、ボイスボットの得意分野です。顧客情報システムと連携させることで、申請受付番号やお客様番号による照合で、個別のお客様情報に基づいた自動応答も可能です。
LPガスの法定点検など、お客様への架電(アウトバウンドコール)も自動化できます。ボイスボットが対象のお客様リストに沿って自動で電話をかけ、点検日程の案内と予約受付を行います。Google等のカレンダーを参照すれば、予約枠やスケジュールを考慮したアポイントメントを切ることも可能です。
これにより、オペレータは単純な架電業務から解放され、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
ガス料金の未払い督促は、コールセンター業務の中でも特にオペレータの心理的負担が大きい業務です。お客様との対話が感情的になりやすく、時にはクレームやカスタマーハラスメントに発展するケースも少なくありません。
ボイスボットは、このデリケートなアウトバウンドコールを自動化し、「業務効率」と「従業員の心理的安全性」を両立させる強力な一手となります。
ボイスボットによる一斉架電は単に効率化を実現するだけでなく、相手がAIであるため、お客様も感情的になりにくく、不必要な対立を回避することができます。
またボイスボットは、通話で支払い意思を確認した後、即座にSMSでお支払いの手続きのURLやガイダンスを自動送信することできます。よって、未納金回収率の向上だけでなく、オペレータの後処理作業(ACW)の削減の面でも効果を発揮します。
ボイスボットを導入することで、企業は以下の3つの大きなメリットを享受できます。
■定型業務の自動化による人件費の削減。
■24時間対応の実現による機会損失の防止。
■オペレータが有人対応必須の業務に集中できるため、コールセンター全体の生産性が向上。
■「電話が繋がらない」という最大のストレスを解消。
■24時間いつでも問い合わせが可能になる利便性。
■手続き完了までの待ち時間が大幅に短縮。
■単純作業やクレーム対応の一次受付から解放され、精神的負担が軽減。
■より専門性が求められる業務に集中でき、スキルアップやモチベーション向上に繋がる。
■オペレータの離職率低下に貢献。
本記事では、ガス会社のコールセンターが抱える構造的な課題と、その解決策としてのボイスボット活用について解説してきました。
引越しシーズンの電話集中、定型業務による重要業務の圧迫、24時間対応の壁――これらの根深い課題を解決する鍵は、ご紹介した通り「人とAIの最適な役割分担」にあります。
ボイスボット導入の本質は、単なるコスト削減や業務の自動化ではありません。その最大の価値は、オペレータを単純作業から解放し、本来人間がやるべき付加価値の高い業務に集中させることにあります。
ボイスボットが定型業務を正確かつスピーディに処理する一方で、人(オペレータ)は緊急時の冷静な判断や、お客様一人ひとりの状況に寄り添った丁寧なヒアリングといった「人にしかできない温かみのある対応」に専念できるようになるのです。これは、顧客満足度と従業員満足度を同時に向上させる、極めて効果的な一手と言えるでしょう。
もちろん、いきなり全ての業務を置き換える必要はありません。まずは繁忙期の「開栓・閉栓の自動受付」や、ボリュームが問い合わせの多い「料金案内」といった一部の業務からスモールスタートし、その効果を実感してみてはいかがでしょうか。
ボイスボットは、未来の社会インフラを支えるガス会社にとって、目の前の課題を解決するだけでなく、従業員の働きがいを高め、企業の競争力を強化するための戦略的なDX(デジタルトランスフォーメーション)投資です。その第一歩を、ぜひご検討ください。
株式会社TACTが提供する、AI コンシェルジュ®は、電話対応業務の自動化・効率化で、さまざまな場面で活用されています。電話時に人の発する言葉を音声認識でテキスト化し、辞書やDBと連携・適切な回答を抽出・音声合成で回答することで、音声対話を可能とするAIソリューションです。
国内トップクラスの音声ボット導入実績と、長年のコールセンター運営で培ったノウハウで、サービス導入後も目標達成に向けチューニングを繰り返し徹底的にサポートいたします。また、様々なシステムとの連携が可能となっており、企業ごとにカスタマイズしたフローや音声認識辞書を構築し、複雑な業務も高い品質で実現しています。
コールフローや対応内容によって初期費用や月額費用が異なりますので、まずはお問い合わせください。