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2025.07.30
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FrontDesk
自治体
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少という構造的な課題に直面する現代の自治体にとって、限られたリソースで高品質な行政サービスを維持・向上させることは至上命題です。また、「行政手続きの煩雑さ」や「窓口での待ち時間」といった住民側の課題は、自治体にとって長年の懸案事項です。そのような課題を乗り越えるために「フロントヤード改革」が今注目を浴びています。
本記事では、フロントヤード改革の核心的な考え方から、具体的な施策、成功事例、そして乗り越えるべき課題まで、その全貌を体系的に解説します。
自治体フロントヤード改革とは、住民サービスの利便性向上と職員の業務効率化を目指し、住民との接点多様化・充実化、データ活用による窓口業務改善、庁舎空間の有効活用を進めることです。
行政業務は、住民と直接接点を持つ「フロントヤード」と、その後方で審査やデータ処理を行う「バックヤード」に大別されます。フロントヤードは窓口、電話、ウェブサイトなどを指し、バックヤードは基幹システムでの処理や部署間連携といった業務を担います。
行政サービスのデジタル化は、2020年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」や「デジタル・ガバメント実行計画」を皮切りに加速しましたが、当初は行政手続きのオンライン化が中心でした。やがて議論が進み、2024年6月の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では重点政策の一つとして、住民と自治体との直接的な接点である「フロントヤード」の改革が重要視されるようになりました。
現在の地方公務員は団塊ジュニア世代が比較的多く、2040年頃に退職が集中する一方で、若年層の入庁者はその三分の一程度と予想されており、地方公務員の数が大幅に減少する見込みです。 行政サービスの維持・向上: 経営資源が制約される中で、多様化・複雑化する住民ニーズに対応し、質の高い行政サービスを持続的に提供するためには、業務の自動化や効率化が不可欠となっています。
フロントヤード改革が目指すゴールは、大きく住民満足度の向上と職員の生産性向上の2つに集約されます。住民満足度の向上では、手続きの待ち時間短縮、申請書類作成の負担軽減、オンラインでの手続き完結などを通じて、住民がストレスなく利用できる利便性の高い行政サービスを提供します。職員の生産性向上では、手作業によるデータ入力や書類の照合といった定型業務をデジタル技術で自動化・効率化し、創出された時間を専門的な相談業務などの付加価値が高いコア業務へシフトさせることができます。
これらの目的を達成することで、「行かない」「待たない」「書かない」「迷わない」窓口を実現し、質の高い行政サービスを提供し続けることが可能になります。
前段では、持続可能な住民満足度の向上と職員の生産性向上を目指す上で、「行かない」「待たない」「書かない」「迷わない」窓口を実現することが重要になることをお伝えしました。よって、ここではその実現にあたって、具体的な施策や対策方法について説明します。
「行かない窓口」とは、スマートフォンやPCから24時間365日手続きを完結できるオンライン申請の拡充を指します。時間や場所の制約なく申請できる環境は、住民の利便性を最大化するとともに、物理的な窓口の混雑緩和にも大きく寄与します。
来庁が必要な場合でも、住民のストレスを最も軽減するのが「待たない窓口」です。その中核となるのが窓口の事前予約システムです。このシステムは、単に待ち時間をなくすだけでなく、サービスの質を飛躍的に向上させます。予約時に用件を把握することで、職員は来庁前に必要な情報や書類を準備できます。
その結果、1人あたりの窓口対応にかかる時間を大幅に短縮することができます。そして、浮いた時間で福祉関連の相談のような、時間をかける必要のある業務をより手厚く対応することが可能になります。
窓口での手続きをスムーズにするのが「書かない窓口」です。これまでは手続きごとに異なるフォーマットの書類に記入しなければならず、住民の手間を煩わせるだけでなく、職員の転記作業などにも多くの時間が費やされていました。マイナンバーカードの認証情報を利用した入力の自動化や、RPA(Robotics Process Automation)やツールを用いた自動転記作業等で、双方にかかる負担を大幅に削減することが可能になります。
「迷わない窓口」とは、手続きや書類で迷わずに、どんな方でも使いやすい窓口を提供することです。庁内のレイアウトや導線を適宜見直し、受付や案内をスムーズに行うことで、住民の満足度を向上することができます。また「ワンストップ窓口」で必要な手続きを網羅的に案内・受付ができれば、住民が庁舎内外で様々な窓口を回る必要がなくなり、一度の訪問で用件を済ませられるような支援が可能になります。
ここではフロントヤード改革の成功モデルとして紹介されている静岡県裾野市の事例について紹介します。
裾野市では2023年10月より予約・受付発券システムの『FrontDesk』を実証実験で得たデータをもとに本格導入しました。実証実験では繁忙期のゴールデンウイークで大きな効果が見られ、システム導入前の前年と比較して、窓口で呼ばれるまでの時間は60分から15分へ大幅短縮し、手続き完了までの時間も同様に80分から45分へと短縮に成功しました。
この背景には単純な予約機能による窓口の混雑を防いだだけではありません。裾野市が同システムのログで得た情報をもとに、業務上の「ムダ・ムラ」を排除し、きめ細やかな窓口の受付時間・予約枠を設定したことで、徹底的な業務効率化に成功したことに起因します。
また、窓口の事前予約は基本的にPC・スマートフォンを用いてWEBから行います。しかし、住民の一部には家にPC・スマートフォンをお持ちでない方や、WEBでの操作に不慣れな方もいます。そのような方でも手軽に予約ができるように、AIの電話窓口からでも来庁予約をすることが可能なため、デジタルデバイド対策にも力を入れています。
■ 日本初!静岡県裾野市で窓口の事前予約サービス『FrontDesk』の本格導入を10月より開始
フロントヤード改革は、デジタル化を推進する一方で、「誰一人取り残さない」という行政の基本理念を堅持しなければなりません。デジタルデバイド(情報格差)への配慮は、単なる注意点ではなく、改革の成否を分ける重要戦略です。具体的には、以下の3つのアプローチが求められます。
オンライン申請という便利な選択肢を増やすと同時に、従来の対面窓口のサービス品質も向上させることが重要です。例えば、高齢者や障がいを持つ方々が安心して相談できるよう、プライバシーに配慮した相談ブースの設置や、筆談・多言語対応ツールの整備などが挙げられます。
デジタルに不慣れな住民を「取り残す」のではなく、使えるように能動的に支援する視点が必要です。自治体職員や専門のサポーターが、スマートフォン教室の開催や、庁舎内に設置したPCでのオンライン申請操作を丁寧に補助する「伴走型サポート」は極めて有効です。
提供するオンラインサービスは、誰もが直感的に操作できるユニバーサルデザインを心がけるべきです。文字の大きさ、平易な言葉遣い、シンプルな画面構成など、細部にわたる配慮が、利用のハードルを大きく下げます。
フロントヤードでの受付プロセスをどれだけ効率化しても、後続のバックヤード業務が旧態依然のままでは、全体の生産性は向上しません。フロントで得たデジタルデータを、バックヤードで紙に出力して手作業で処理していては、改革の効果は半減します。受付から審査、決裁、保管までを一気通貫でデジタル化するバックヤード改革と一体で推進することが、真の業務改革を成し遂げるための絶対条件です。
フロントヤード改革とは、BPR(業務プロセス改革)を通じて、行政サービスを「行政側の都合」から「住民側の体験価値」へと転換させる、サービスデザインそのものの変革です。この改革を通じて、住民満足度の向上と職員の生産性向上を両立させ、将来にわたって持続可能な行政運営の基盤を築くことができます。
改革の道のりは全く容易ではありませんが、明確なビジョンと全庁的なコミットメント、そして着実な実行計画があれば、必ずや大きな成果に繋がります。この記事が、貴自治体における次なる一歩を後押しする一助となれば幸いです。
参考文献:
■ 自治体フロントヤード改革推進手順書【第1.0版】令和7年5月30日
■ 日本一市民目線の市役所に向けて 市民課窓口は予約で「待たない窓口」へ 広報すその
株式会社TACTが提供する来庁予約システム「FrontDesk」は、「待たない窓口」を実現する自治体向け予約サービスです。スマートフォンやPCから簡単に来庁予約ができ、窓口業務の効率化と市民サービスの向上を実現します。
FrontDeskは、オンライン予約機能、カスタマイズ可能な設定、効率的な業務改善、データ収集と分析といった特長を備えており、様々な規模の自治体で導入されています。特に、WEB の活用が苦手な方にも対応できるAI 電話による24時間予約受付は、他のシステムにはない大きなメリットです。庁内端末と予約システムとの連動も可能で、一つのサービスで一元管理できる点も評価されています。FrontDeskは、窓口業務の効率化と住民満足度向上に貢献する、フロントヤード改革に最適なソリューションです。
FrontDeskの導入に関する相談は、株式会社TACTまでお気軽にお問い合わせください。
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