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2025.07.17
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AIコンシェルジュ
近年、企業の顧客対応や社内業務において、ボイスボットの導入や検討が急速に進んでいます。顧客からの問い合わせ対応におけるオペレーターの負担軽減、24時間365日の対応、人件費削減など、その導入メリットは計り知れません。
しかし、「ボイスボットって、結局役に立つの?」「うちのコールセンターでも使えるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ボイスボットに関してよくある疑問3つをQ&A形式で解説し、その実態と可能性について深く掘り下げていきます。
Q. ボイスボットは、ITに不慣れな高齢者層でも問題なく利用できますか?
A. はい、多くのボイスボットは、年齢層が高いユーザーでも使いやすいように設計されています。
ボイスボットの最大の利点は、「音声」という最も直感的なインターフェースで操作できる点です。スマートフォンの操作や複雑なWebサイトの利用に抵抗がある方でも、電話をかけることに慣れているため、比較的スムーズに利用できます。
技術的な側面では、以下のような工夫がされています。
■高精度な音声認識:
近年の音声認識技術は飛躍的に向上しており、環境音などのノイズや、声のトーンの変化にも対応できるようになっています。また、スマートフォンの普及に伴い、「〇番を押せと言われても、ボタンがないから押し方がわからない」というIVR(自動応答システム)に不満を持っていた人も、ボイスボットの音声認識によって、スムーズな応対を受けられるようになっています。
■繰り返しと確認:
音声が聞き取れなかった場合や、意図が不明瞭な場合には、再度発話を促したり、復唱確認をすることで、誤回答を防ぎます。また、音声ガイダンスを聞き取りやすい声質や速度に調整することも可能です。
■有人対応へのスムーズな切り替え:
ボイスボットで解決できない場合は、速やかにオペレーターへ接続する仕組みを設けることで、顧客のストレスを軽減します。
これらの細やかな工夫により、スマホやデジタルに不慣れな方でも電話口で戸惑うことなく、必要な情報を迷わず得られ、安心して手続きを進められる環境が、着実に整えられつつあります。
Q. ユーザーが方言を使ったり、業界特有の専門用語を話したりする場合でも、ボイスボットは正確に認識できますか?
A. 一般的な会話であれば問題ありませんが、方言や専門用語の認識精度は、ボイスボットの「学習データ」と「チューニング」に大きく依存します。
■方言への対応:
・大手ベンダーが提供するボイスボットは標準語を中心に学習しているため、多少の抑揚やアクセントの違いでは、方言の認識に特段問題ありません。
・しかし、地域性の強い方言や、独特の言い回しを持つ方言の場合、認識がうまくされない可能性があります。(例:関西弁の「ちゃうちゃう」)
・対策としては、特定の方言話者の言い回しを学習データとして追加したり、方言から標準語への変換ロジックを組み込んだりする方法が考えられます。
■専門用語への対応:
・特定の業界(医療、法律、金融など)や企業固有の専門用語、商品名、固有名詞などは、一般的な音声認識エンジンでは認識が難しい場合があります。
・この場合、ボイスボットに「辞書登録」を行うことが非常に重要です。頻繁に登場する専門用語や固有名詞を事前に登録し、その読み方を学習させることで、認識精度を格段に向上させることができます。
・顧客からの過去の問い合わせ履歴や、社内資料から専門用語を抽出し、学習データとして活用することも有効です。
結論として、方言や専門用語への対応は、導入前の綿密なヒアリングと、継続的な学習・調整(チューニング)によって精度を高めることが可能です。完全に網羅することは難しいですが、実用レベルに引き上げることは十分可能です。
Q. ボイスボットを導入するなら、やっぱり「生成AI」が搭載されていないと意味がないのでしょうか?
A. いいえ、一概に「生成AIじゃないとダメ」ということはありません。ボイスボットの目的や用途によって、最適な技術は異なります。従来のシナリオ型ボイスボットと、生成AI(LLM)搭載型ボイスボットには、それぞれ異なる特性とメリット・デメリットがあります。
事前に定義された対話フロー(シナリオ)と、キーワードに基づいた応答ロジックで動作します。ユーザーの発話に含まれるキーワードを検出し、あらかじめ用意された回答を返します。
・安定性
応答内容が事前に決まっているため、常に安定した回答を提供できます。そのため、ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成すること)のリスクも一切ありません。
・制御のしやすさ:
対話の流れや回答を細かくコントロールできるため、誤った情報を伝えるリスクが低く、コンプライアンス要件を満たしやすいです。
・コスト効率:
案件や構成によって値段が変わってしまうので、一概には言えませんが、比較的低コストからでも導入・運用が可能です。
・柔軟性の欠如:
シナリオ外の質問や、複雑な質問には対応できません。このような場合にはメール・SMSでお問い合わせフォームを送信したり、有人窓口へ転送することが多いです。
大規模言語モデル(LLM)を基盤とし、ユーザーの発話内容を深く理解し、その場で適切な回答を「生成」します。膨大なデータを学習しているため、多様な質問に柔軟に対応できます。
・高い柔軟性と自然な対話:
シナリオに縛られず、文脈を理解した上で、人間が話しているかのような自然な対話が可能です。未学習の質問にも、推論によって回答を生成しようとします。
・問題解決能力の向上:
複雑な質問や、複数の情報を組み合わせる必要がある質問にも対応できる可能性があります。
・ハルシネーション(嘘の生成)のリスク:
生成AIは事実ではない情報を「もっともらしく」生成する可能性があります。最近ではRAG(Retrieval Augmented Generation)と呼ばれる制御技術が注目をあびていますが、生成AIに読み込ませるデータの精度や曖昧な質問によっては、ハルシネーションのリスクをなくすことは難しいとされています。
・情報漏洩・コンプライアンス上の問題:
文脈を保持する都合上、生成される回答を完全にコントロールすることが難しく、予期せぬ応答をする可能性があります。例えば、顧客が発した機密・個人情報が、学習データとして利用されたり、意図せず外部に漏洩するリスクがゼロではありません。加えて、不適切な表現や、差別的な内容を生成するリスク、個人情報の取り扱いに関する懸念もあります。
・高コスト:
高度な計算リソースを必要とするため、導入・運用コストが高くなる傾向があります。また、生成の度にトークン生成料金が発生するので、ベンダーによっては、通話料や月額回線利用料に上乗せされる形で、請求されることもあるかもしれません。
結論として、ボイスボットにおけるシナリオ型AIと生成AIには明確な優劣は存在せず、両者が自分たちの強みを生かしているのが2025年現在のコールセンターのAI事情となっております。
シナリオ型ボイスボットはコールセンターDX黎明期から存在しているIT技術なため、ベンダー問わず導入実績も多く、業種や業界を問わず、様々な電話業務で使われています。実際に、高セキュアな環境である金融企業や自治体への導入事例もあり、安全性や安定性については申し分がありません。
一方、生成AI搭載型ボイスボットは、柔軟な対話や未学習の質問への対応に大きな期待を持たれつつも、情報の正確性や機密性が極めて重要となる業務(例:契約内容の確認、金融取引、個人情報に深く関わる問い合わせ)には、利用が難しいとされています。
多くの企業・コールセンターでは、電話は顧客対応の「最後の砦」と称されることもあり、WEBサイトやチャットボットで課題が解決しなかった温度感の高い顧客が問い合わせて来ます。そのため電話口での誤った情報の提示は決して些細な問題ではなく、顧客満足度を低下させ、トラブル・クレームへと繋がってしまう可能性すらあります。そのため、現状ではハルシネーションの心配がなく、応対内容やコールフローのコントロールが容易いシナリオ型のボイスボットが好まれる傾向にあります。
ただし、AIの技術は日進月歩であり、リスク低減のための技術(ファインチューニング、RAGなど)も進化しています。ボイスボット導入もコールセンター業界ではまだまだ浸透しきってはおらず、技術の進化とともに導入に前向きな企業が増えてくると考えられます。今後は、より安全に、より幅広い業務でボイスボットが活用されるようになるでしょう。
ボイスボットは、単なる自動応答システムではなく、顧客体験の向上や業務効率化に大きく貢献する強力なツールです。年齢層の高い顧客への配慮から、方言や専門用語への対応、そして最新の生成AI技術の導入まで、その進化は止まりません。
重要なのは、「自社の課題を解決するために、どのタイプのボイスボットが最適か」を見極めることです。生成AIは確かに魅力的ですが、そのリスクとメリットを十分に理解し、用途を限定した上で導入を検討することが賢明です。
従来のシナリオ型ボイスボットも、その安定性と確実性から、依然として多くの企業にとって有効な選択肢であり続けます。
ボイスボットの導入を検討される際は、ぜひ専門家と相談し、自社のニーズに合った最適なソリューションを見つけてください。
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